イギリスで学ぶサッカーMBAのブログ

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日本のダイナミズム

ドイツのブンデスリーガ(統括団体)が、

日本語サイトを開設しました。

http://www.bundesliga.com/jp/

 

欧州サッカー界で、日本という国が存在感を確実に

高めていることを表す、一つの実例だと僕は思っています。

 

僕がヨーロッパに来てこれまで、欧州で働くサッカー関係者の

少なくとも50人以上と話す機会がありました

(この数はおそらく、クラスメートの誰よりも多いはずです)。

 

その中で感じたのは、日本が今「新たな有望選手の発掘先」と「顧客の開拓先」

という両方の側面で、欧州の関係者からの注目を浴びている、ということです。

 

下記記事を読んでもらうとおわかりになるように、

ブラジルやアルゼンチンと比較すると絶対数こそ少ないですが、

日本人選手の欧州移籍の増加件数については、

世界でトップレベルの大きな勢いを誇っています。

 

 http://www.goal.com/jp/news/3476/%E3%82%A2%E3%82%B8%E3%82%A2/2012/12/15/3603821/%E6%AC%A7%E5%B7%9E%E4%B8%BB%E8%A6%81%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B0%E7%A7%BB%E7%B1%8D%E5%A2%97%E5%8A%A0%E6%95%B0%E3%81%A7%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%8C%E3%83%88%E3%83%83%E3%83%97%EF%BC%95%E5%85%A5%E3%82%8A

以前は日本通とされているアーセナルベンゲル監督等、

ごく少数の人間が注目するに留まっていました。

しかし最近は、香川選手の例に見てとれるファーガソン監督や、

木下選手にオファーを出したとされているマンチーニ監督など、

世界的な強豪を率いてタイトルを獲得している監督が、

軒並み日本人選手に注目を向けています。

 

一方で、クラブの経営(チーム強化ではなく、ビジネス面)を担っている幹部や、

マーケティング担当の方々から話しを聞いていると、

「中国・インドに次いで、日本をビジネスマーケットとして重要視している」

という言い方をされます。実際に、試合日にマンチェスター・ユナイテッド

スタジアムにあるオフィシャルグッズショップに行くと、来店客の約15%が

日本人でした。また、ピッチ横の電子看板では、日本語のメッセージが

試合中頻繁に表示されます。

 

僕が興味深いと思うのは、「選手の発掘先」と「顧客の開拓先」

という、両方の観点で欧州から高い注目を浴びている国、つまり
「いい選手が出てくる上に、ファンがグッズをいっぱい買ってくれそうな国」は、
世界でも本当に限られているのではないか、ということです
(これについては、MLBにおける日本の野球選手とファンも
同様かもしれません)。

 
インドや中国は、有望選手の輩出先とはまだ見られていません。

アルゼンチンも、一般的な評価として、

市場としての魅力が高いという話しはあまり耳にしません。

 

韓国も、欧州クラブに所属している選手は一定数いるものの、

人口約5000万人であることを考えると、

日本のほぼ半分で魅力にはいささか欠けるマーケットです。

 

こういったことを考えていくと、日本の他に考えられるのは

ブラジルぐらいでしょうか。

 

ある1つの側面からのみ注目されているということではなく、

複数の側面から注目されているというのは、長期性をもたらす

(つまり一過性のブームでは終わらない)という点で、

非常に重要なことだと僕は思っています。

欧州のみならず、アジアや南米やアフリカで、日本の存在感がもっと高まって、

世界中でさらなるダイナミズムが生まれていって欲しい。

いつか僕が立つのは、それを見届ける場所ではなく、
作り出す場所でいたいと思っています。

マメヒコ

渡英する前の約半年、渋谷にある「マメヒコ」というカフェに

頻繁に通っていました。

渡英前日も、閉店時間を過ぎていたのに、お店の前まで行って、

扉の前でしばらく思い出に浸っていました。

 

イギリスにいて、日本を、東京を恋しいと思うとき、

思い出すのはいつもこのカフェです。

 

色んな出来事を経て、自分の人生の可能性を放棄することなく、

何とかここまでこれたのは、きっとこのカフェがあったからだなぁ、

とすら思います。通っていたのはたった半年なのにな。

 

 

このブログを開設して以降、僕に興味を持って個人的に

ご連絡くださる方が何名かいらっしゃいました。

ありがたくもあり、恐れ多くもあり。

 

最近の僕の考えを成しているのは、

このカフェに由来しているものが非常に多いんです。

だから、そのカフェについて知ってもらったら、

もっと色々得てもらえるものがあるのかも知れません。

 

オーナーの方がとてもユニークな方で、映画やラジオをやっています。

URLを貼っておくので、よかったら一度サイトを訪れてみてください。

そしてもし気になったら、お店にも足を運んでみてください。

 

http://www.mamehico.com/mamehicopictures/index.html#id100

http://www.mamehico.com/category/radio

 

今、マメヒコでは「檸檬ケーキ」という季節メニューが出ています。

僕は初めて食べた時に、口に入れた瞬間「おいしい!」

客席で独りつぶやいてしまったくらい、本当においしいと感じました。

心からお勧めできるケーキです。

フランクフルトのスタジアム

コメルツバンク・アレーナというところに行ってきました。

今乾選手が所属しているフランクフルトのホームスタジアム、

それから2011年女子W杯でなでしこJAPANが優勝したスタジアム

でもあります。

 

スタジアム担当者に幅広い質問ができたものの、検証のための質問ができず、

情報の確度がスタッドフランスよりも低い可能性が否めません。

※一般ファン向けにスタジアム担当者が細かい点を省いて説明していた可能性あり。

 

不特定多数の方がお読みになるブログに掲載するのはどうか、

と思うところもあるのですが、みなさんにとって何かを考える

きっかけにしていただくべく、思い切って公開します。

あくまで参考程度にお読みいただき、

もし詳細を確認されたい場合は、サイト上記の私のアドレスにご連絡ください。

 

【マネジメントスタイル】

日本の指定管理者制度と一部類似。

所有権:フランクフルト市

運営権:Stadion Frankfurt Management

(SPORTFIVEと地元の施設管理会社が共同出資した会社)

※ただし、VIPルームにおかれていた配布用名刺はSPORTFIVEだったため、

 主導権はSPORTFIVEが握っている可能性あり

 

ただし収益分配の構造が大きく異なる。

日本の場合、スタジアム内収入の多くが所有者たる自治体に入り、

自治体から運営者たる運営会社に対して運営補助金が配分される。

 

一方で、当スタジアムでは収入の大部分(9割)が運営会社に入り、

運営会社から自治体に賃料として一定金額を納める、というスタイル。

 

利用者たるクラブも同様、クラブがチケット収入

(売上の4割がクラブに入る?)などを元に、自治体に賃料を納めている。

 

【記者席の配置について】

3階席(スタジアムの最上階で最も観づらいところ)に配置している。

試合を実質的に無料で観られる記者よりも、

自腹で試合を観に来るファンにこそいい席を優先したい。

 (※補足:一方で、仕事で関わる立場の側からすると、
視認性の低さによる失敗のリスクを軽減すべく、
少しでも観やすい位置で観たいという思いは強くあります。
例えば実況の人間は、背番号や顔が見づらいと選手名を間違えてしまう
リスクが高くなります)
 

【スタジアムの配色】(黄と紺)

黄色は地元の銀行、コメルツバンクのコーポレートカラー。

2005年のリニューアル以降、この色を使っている。

フランクフルトのクラブカラーである赤と黒とは異なる点について、

ファンからの反対意見が強く出たかのではないか、という点については

「フランクフルト市の政治的判断でこうなった」とのこと。

 

【その他裏話】

バイエルン・ミュンヘンは、国内リーグの試合ですら

専用キッチン(!)を持ち込んでくる。おかげで

スタジアムのバス用搬入通路の高さが足りない

(通路の高さは6m以上と充分な高さにも関わらず)。

 

だからバイエルン・ミュンヘンだけ搬入通路の入り口前でバスを止めて

中に入ってもらうようにしている。

 

ピッチ上の空中に全方位型オーロラビジョンを設置(NBAと同様のイメージ)。

リーグのブンデスリーガでは使用するが、代表戦では使用しない。

ファンの興奮度が代表戦の方が高く、ファウル判定における審判関連の問題など、

トラブル抑止が目的。

 

芝生は年1回、120,000ユーロ(約1500万円)をかけて全面入れ替え。

全面入れ替えには1週間かかる。

 

コンサートを行う時は、芝生にカバーをかけるので、観客が踏んだピッチそのものは

その後もケアなしで利用可。ただし、ステージ設置部分については完全に使用不可となる。最短2日で復元。

 

コンサートのゲストの控室は、選手の控室(ロッカールーム)を利用。

ロッカー等を端っこに寄せてカーペットを敷く。

ロックグループによってはビリヤード台(!)を持参するところもある。

 

ブカレスト(ルーマニア)に、全く同一デザインのスタジアムが建設されている

(ナショナル・スタジアムと思料

 http://jp.uefa.com/uefaeuropaleague/season=2012/final/index.html)。

おそらくコスト削減とデザイン性確保の両立が主目的。

※このプロジェクトモデルは日本でも活用できるのでは、と思料

 

石の彫刻で作ったフランクフルト市の紋章ををBusiness Loungeエリアに設置。

 

【所感】

◆前提

現状日本においては

①所有権も運営権もクラブ側が保有しているパターンが理想

②妥協案として指定管理者制度(所有権は自治体、運営権は民間団体という

管理スタイル)が存在し、それが「現実路線」として(やむなく)一般化

 

という認識が先行している印象がある。

 

しかしながら、Jリーグに関する(自身の)調査結果によると、

①のパターンよりも、②のパターン(指定管理者制度導入先)

の方が顧客満足度は高い。

 

指定管理者制度については、

・早稲田にて間野義之教授による積極的な研究

・広瀬一郎氏等が著書による一般的な説明

がなされているが、それらが一般レベルまで認知されている状態ではない。

また、上記の2つでもカバーしきれていない分野は多いにあるという印象。

 

つまり、新スタジアム建設や既存スタジアム運用に関わる立場の、

自治体・クラブ関係者・市民等が議論をする上で

必要となる知識レベル向上のための環境が備わっているとはいいがたい。

 

スポーツビジネスに興味を持っている人同士の議論でも、

「いいスタジアムを作るならクラブ所有にすべきだけど、日本ではまず無理だよな」

という結論に落ち着き、発展的な意見が生まれにくい状況。

 

◆所感

所有権が自治体にあっても、
ハード面(クラブの歴史を紹介するミュージアム設置等)

やソフト面(コンサート実施などの運営)等において、民間団体の運営権が

きっちり確保されていれば、充分素晴らしいスタジアム運営ができると認識。

 

日本で継続して行われているオリンピック・W杯招致活動について、

常に議論の的となる(そして発展的な結論があまり出ない)

「イベント後のスタジアム運営をどうするのか」について、

欧州のスタジアム・マネジメントに関する調査をより深めることは、

極めて有効だと認識。特に、クラブや自治体ではなく、

運営権者(SPORTFIVE等)へのヒアリング実施は大いに参考になるはず。

 

<ヒアリング例>

・新スタジアム建設の場合、どのタイミングから運営に関わるのか

・マッチデー・インカム(試合関連収入)をどのように分配しているのか

・自治体からどのようにして運営権を確保するのか

・運営権を1社で持つ場合と複数社で持つ場合のメリットデメリット

 

◆その他

最寄駅からスタジアムまでのルートが非常に印象的。

両側が木で覆い尽くされている一本道を通り、

そこを抜けるとスタジアムを真正面にして、左右対称で両側に

クラブの練習用コートが設置されている。

スタジアムそのものだけではなく、観客の同線全体にデザインを施す

という意識は素晴らしいと感じた。

ちなみに、ビジネスラウンジや記者席などは、木目調が多用されていて、

デザインセンスの高さを強く実感した。

 

スタジアムの形状をモチーフにしたロゴが

いたるところで活用されていたのも印象的。

ウェンブリーでも同様のロゴが存在しており、

スタジアムそのものをファンの間でアイデンティティー化するという意味で、

極めて効果的だと感じた。

 

ドイツの場合、同じスタジアムを指すにしても

シュタディオン、アレーナ、パークといくつかの表現がある

(日本もそうですが)。それぞれどういうコンテクスト(背景)の元で

名称が定められているのかを今後知りたい。

 

一般客を相手にしたスタジアムツアーという状況下で質問をしても、

説明者が一般客にわかりやすい説明をするべく、実際とは少し異なる

説明の仕方をするケースが極めて多い。また、個人で参加しても、

説明の大部分が英語ではなく現地語(ドイツ語等)となる。

 

この先本格的な調査をするためには、正式な「視察」として、

または5人~10人程度のグループで案内依頼を出す必要あり。

サンドニの興奮

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ベルギーから流れてフランスに辿り着きました。

大学院生の端くれとして、たまには勉強チックなことも書いてみようと思います。


パリのスタッド・ド・フランスというスタジアムに行ってきました。

ここは1998年フランスW杯決勝戦の舞台になった場所です。

日本代表との直接の接点でいうと、フランス代表を相手にここで
2度対戦していて、1度目は0-5と大敗、そして2度目は1-0と
勝利しています。どちらも日本人ファンにとっては非常に印象の強い試合です。

幸いにも、スタジアム内部をスタッフが案内してくれるスタジアムツアーに
参加することができました。いったんは1時間程度で終了したのですが、
僕だけ後からスタッフをつかまえて聞きたいことを聞いていたら、
結局合計でなんと2時間半・・・。

大量の質問をしただけではなく、時には際どい質問も

させていただいたのですが、ためらうことなく答えていただけて、

本当に素晴らしい対応をしていただけました。


今の僕にとって、スポーツ業界に関する知識欲の充足ほど
幸せに感じるものはありません。

なんてったってパリに来たら誰もが行くであろう
ルーブル美術館に行かず、真逆の方向にあるサッカースタジアムに
行ってるんですから・・・。

こういった知的興奮と充足が生まれるのは、ここがサルトルをはじめとする
数々の著名な哲学者を生み出したフランスという国だからなのでしょうか。
とにかく、せっかくなので、僕のメモをここに記載しておきます。

体裁はあまり意識していないので、多少の読みづらさはご容赦ください。


・建設費の47%を政府が、53%を国内大手の建設企業2社で負担。

 所有権は政府、(30年間分の)運営権を企業が保有。

 試合関連の収入については、所有者たる政府でなく運営者たる企業側が

    多くを得られる仕組み。さらに運営補助費も政府から企業側に出ている。

    ただ、2013年からは(政府が当初の契約を破棄して)運営補助費が大幅に削減

(もしくは打ち切り?)の予定。それに伴ってスタジアムにおける

 サービスも低下する見込み。

 

・近くに聖堂があり、それより高さのあるスタジアムの建設は認められなかった。

 しかしフランスW杯決勝戦を目的に建設されたスタジアムとして、

 8万人分の観客席と視認性の両方を確保するためには、

 聖堂を上回る高さが必要だった。

 そこで苦肉の策としてピッチを地下に位置する場所に作り、

 それに合わせて観客席の位置そのものも全体的に低く設計した。

 結果、スタジアム全体の高さを低く抑えて、求められていた要件を満たした。

 

・サッカーの試合については、原則的にフランス代表の試合に限定しており、

 特定のクラブのホームスタジアムにすることを意図していない。

 観客席が全面灰色なのはそのため。フランス国旗の青・白・赤というカラーも、

 特定のクラブ(PSG等)のカラーと重なるために使えない。

 

・クラブがホームとして利用しているスタジアムとは異なり、

 年間のサッカーの試合数が限定されている。他に陸上競技やラグビーでも

 使用されるが、それでもやはり試合収入には限界がある。

 そのため、歌手のコンサート等、他のエンターテイメントへの活用を

 積極的にしている。他のイベント会場と比較した際の大きなアドバンテージは、

 「フランスW杯における母国優勝という栄光の舞台」であるということ。

 この点は、他のどの一般的なイベント会場(コンサートホール等)とも

 比較できない分野の強みと認識している。

 

 ちなみに、これまでモータースポーツのイベントもスタジアムで実施している。

 一つはアスファルトをピッチ上に設置してレースを実施。 

 もう一つは芝生を凍らせて(!)実施したアイスラリー。

 上記の通り、サッカーの試合数が少なくて比較的スケジュールの空きがあるため、

 設営に日数(2週間程度)を要するイベントでも開催が可能という点が、

 別の強みとして挙げられる。

 

・陸上競技用トラックも併設されているが、トラックは用途に応じて取り外しが

 可能。ただし一方で、トラックをはめ込んだ時にほんのわずかではあるが

 隙間が生まれてしまうのは事実。結果、トラックの性能としては通常

 (取り外し不可のもの)と比べると劣る(=好成績が出づらい)かもしれない。

 

・選手の試合前の待機場所は、二つの点で管理を徹底している。

 一つは照明。選手がナイター照明や太陽光をまぶしく感じないよう、

 最適な光量を保っている。もう一つは室温。サッカーと比べて、

 フィジカルコンタクトの衝撃度が高いラグビーの試合の場合は、

 怪我予防のため、高めの体温を維持させるべく、

 サッカーに比べて高い室温に設定している。

 

・芝生は根付きや修復といった観点から、フランス産とイギリス産の混合種を

 使用している。また、3種類の薬品を用いて、芝生の強度や色を一定レベルに

 維持している。

・スタジアムツアーやオフィシャルショップは、

 他の世界的に知られているスタジアムに比べて小規模。

 クラブ所有のスタジアムだと、タイトル獲得の度に優勝カップ等の

 「目玉」となる展示物が増えていく。その点において、クラブとの接点を

 持っていないスタジアムでは魅力を生み出しづらい。

 それを補うべく、スタジアム管理に関する案内に重きを置いている

 (消防士の待機場所兼防火システム管理室への入室等)。 

 

以上。スタジアム運営については、僕も日本で勉強・調査を
していたことがあるのですが、関係者にここまで突っ込んだ話しを聞けたのは
はじめてで、書籍や体験で得ていた知識を実務上の運用と組み合わせて
理解するのに、絶好の機会となりました。

これをお読みいただいている多くの方にとっても何らかの参考になればと思います。 

ベルギーに来たよ

冬休み期間を利用して、ベルギーに来ています。

 

クリスマスイブをブリュッセルで過ごし、

クリスマス当日はアントワープというスケジュール。

ケーキのかわりにワッフルを13個食べました。

 

アントワープに来たのは、洗練された街並みとファッションの発信地、

という点に憧れてのことだったのですが、

フランダースの犬」の舞台になった街でもあるんですね。

 

主人公ネロがパトラッシュと眠るシーンで有名な大聖堂に行った後、

ベルギービールを飲みながらチョコレートを片手に、

PCでリメイク版(アニメ版を編集した映画)を観ました。

 

フランダースの犬というと「僕もう疲れたよパトラッシュ」

というネロの最期のフレーズと、オープニング画面の

「ランランラーンランランラーン ジングルジングルなんとかかんとか」

というメロディー(歌詞が途中からゴチャゴチャしてよく聴き取れなくなるアレ)

しか記憶にありませんでした。でも改めて観てみると、示唆に富んだ、
本当に素晴らしいストーリーでした。

 

特に印象的だったのが、ネロのおじいさんが亡くなってしまった翌日から、

ネロが牛乳配達や絵画をする、というシーン。

やり切れないことに直面しても、延々と落ち込まず、

日々の生活と目指す将来のため(短期と長期の両方の側面から)、
今やるべきことにしっかり向き合って取り組んでいく

という姿勢はすごく大事にしないといけないな、と改めて思いました。

 

よくテレビの特番で、大聖堂で横たわるシーンのみをカットして
放映されていることがありますが、実はそれ以外にも印象的な場面が
とても多いです。また、リメイク版のエンディングで流れる
"When I cry"というタイトルの曲がすごく素敵です。

 

会社や学校が休みに入ったけれど家でやることが思いつかない、という方、

もしよければ「フランダースの犬」を選択肢の一つに加えてみては
いかがでしょうか。

3か月経って見えてきたもの

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第一セメスターが終了しました。

イギリスに来てから駆け抜けるように過ぎていったこの3か月。

失うものは無いと思っていたし、得られるものも見えなかったから、

後先考えずにここまで突っ走ってきました。

 

掴んだものは本当にたくさん。充実している、

という言葉ではとても表現しきれないくらい、素晴らしい経験が出来ました。

悔しかったこと、掴み損ねたこともたくさんあるけれど、

それを糧にして得られたものもあるから、

全部ひっくるめて良かったと思うことにします。

 

留学前と今の自分を比較してみて、

二つの点で大きな進歩がありました。

 

一つ目は、自分にとってのサッカーの魅力が、ハッキリとわかったこと。

 

試合の取材で目の当たりにした勝負としての残酷さ、

そして名物教授が授業で述べたあるフレーズ。

この2つが相まって、自分がサッカーの何が本当に好きなのかが

ようやく見えてきました。

 

それは、「サッカーが紡ぎ出す世界観」です。

 

パスはチームメートがお互いに向けた無数のメッセージ交換。

ドリブルは相手との文字通り瞬時の駆け引き。

シュートは勝利への希望を託して描かれる放物線。

ファウルすら、勝利を渇望するプレイヤーの感情の発露。

これらのプレーが試合の中で、守備と攻撃の連動性を帯びながら、

力強い美しさで観客に訴えかけてくる。その世界観こそが、

僕の感じるサッカーの魅力だということです。

 

二つ目は、最終的に自分が理想とするアプローチが少しずつ見えてきたということ。

具体的に言うと、「グローバルな視野で、サッカーを社会面やビジネス面から捉え、

日本中のファンにメディアを通じて発信していくことで、より成熟した見方ができる(=多様な視点を持てる)ファンを増やしていきたい」

ということです。

 

このブログを始めた時に書いたことですが、

元日本代表監督の岡田武史さんが、

「Jリーグができてはじめの10年で選手がプロになった。

 次の10年で監督・コーチがプロになった。

 その次の10年はスタッフがプロになる番だ。」とおっしゃっています。

僕は、さらにその後の10年は、ファンがプロになる番だ、と今思っています。

 

「あのクラブは監督がすぐ入れ替わるからダメなんだ」と普段言いながら、

降格圏内になった途端「監督変えなきゃダメだよ」と言い出す人、

案外多いと思いませんか。

 

負けが込んでいるクラブのフロントを無能、バカと口汚く罵っておきながら、

試合結果以外でクラブを評価する基準を持ち合わせていない人、

結構多いと思いませんか。

 

プロは結果が全て、と言う人は数多くいます。

でもそれって実は、結果以外にクラブの状態を把握するための情報や、

分析する術を持ち合わせていないのを隠れ蓑にして、

結論付けるのが容易い結果論を正当化しているだけに

過ぎないケースも多いのではないでしょうか。

 

だとしたら、プレーヤーサイドと同じように、

ビジネスサイドからの情報発信もたくさんしていって、

ファンがサッカーを考える余地をもっと生み出していけたらいいのではないか。

そうしたら、日本サッカー界は一段階成熟して、新たなステージに上がれる、

そんな気がします。

 

とにかく、僕にも貢献できる領域が、日本サッカー界にはまだ残されているはず。

自分のこの手応えを信じて、次の3か月はさらなる勢いで走り抜けようと思います。

衝動と躊躇のあいだ(冷静と情熱のあいだ風に)

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ここまでの授業と仕事の中で、後悔をしたことは決して1度や2度ではありません。

「どうしてもっと早く事前情報を仕入れることができなかったのか」

「強引にでも名刺交換をお願いして連絡先をもらうべきじゃなかったのか」

「違うアプローチで交渉したらもっとよい結果を引き出せたんじゃないのか」

 

イギリスで会得できることへの期待感が大きい一方で、

それが叶わなかった時の失望感もまた大きい。

 

だけど、残念ながら時間、体力、能力といったキャパシティーの限界もあるし、

何より状況がそれを許さなかった、ということもある。

無理にやったとしても、何かファンダメンタルなものを壊してしまう。

それは信頼関係であったり、礼儀であったり。

 

当然、キャパシティーを高めるための努力は必要です。

やりたいことにこだわる、追求するというのも前提としてもちろん大切。

ただ、状況にそぐわないことはやらない、それに固執しないことの大切さが、

ここに来て深く理解できるようになりました。

 

一歩踏み出す勇気もあれば、踏み外さないための我慢も必要。

 

ゲストスピーカーとして訪れる、業界の最前線で

素晴らしい成果を業界に残している方たちの中にも、

「うまくいかないことなんていくらでもあるんだ」

「結果が伴わなくても、それで良しとする考えも大切」

というようなことをおっしゃる方が複数いらっしゃいました。

 

難しいのは、どこまでやるのが(またはどこまででおさめるのかが)

適切なのかという判断基準に、正解は無いということ。

職種、業種、地域性・・・究極的には案件ごとに異なる。

 

ある国際組織のエグゼクティブレベルでご活躍されている方に、

「多様なバックグラウンドを持つ方たちとの議論で、

 最終的に一つの結論をまとめ上げるにあたって重要なことは何か?」

と聞いたところ、「general senseに沿うこと」という返事が返ってきました。

 

general senseという言葉の意味やニュアンス、

何を対象としてのgeneralなのかは

これを読んでくださっている人によって受けとめ方が異なると思うので、

ここではあえて日本語訳や補記を入れるようなことはしません。

 

僕はともかく、今できる経験を積み重ねて、

自分の感覚を磨いていきたいと思っています。