イギリスで学ぶサッカーMBAのブログ

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不定期連載 " Sports Graphic Fimber"

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イングランドのトップクラブで活躍する香川真司

大きいとはお世辞にも言えない体躯でレギュラーを張る彼の姿に、

勇気づけられている日本人ファンは少なくないはずだ。

 

一方で、人知れず同時期に渡英したアマチュアの選手が、ここリバプールにいる。

しかしこのことはあまり世間には知られてはいない。

当然、押しかける報道陣もここにはいない。

 

仕方が無いから彼の練習風景について、

自分で自分をインタビュー取材した。

 

―N田選手、始めまして。本日はよろしくお願いいたします。

 

「よろしくお願いします。こんなところまで来ていただいて。

 実は僕と同じ苗字なんですよね。お会いする前から親近感ありました(笑)。」

 

―ありがとうございます(笑)。早速ですが、今日の練習はどうでしたか?

 正直に言って、あまりボールが回ってこなかった印象ですが。

 

「ピッチが広めでスペースもあったので、

 トラップからのプレーを心がけていました。

 でも結果的に一つ一つのプレーのスムーズさを失って、

 何度もボールを取られていました。諦めてダイレクトプレーに専念しても、

 ボールがことごとく繋がらなくて・・・。」

 

―ポジションはどこを?

 「とりあえずサイドのポジションをメインでさせてもらってます。

  サイドバックとか、サイドハーフとか。もともと陸上部だったので、

  走ることに抵抗はないっていうか。」

 

―今日のチームのフォーメーションは?

 「ファーガソン監督もここ最近取り入れている、

  ダイヤモンド型の4-4-2です。

  これが僕たちのチームにマッチしているのかどうか、

  監督はこの布陣を見極めていきたいと思っているはずです。」

 

ファーガソン?布陣を見極め?ちょっと唐突に出てきた単語、

 という印象ですが・・・

 

「そうですか?ま、もしよければこちらのサイト見てください。

http://www.goal.com/jp/news/74/%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89/2012/10/08/3435041/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%BC%E3%82%AC%E3%82%BD%E3%83%B3%E3%83%80%E3%82%A4%E3%83%A4%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%83%89%E5%9E%8B%E3%81%AE%E5%B8%83%E9%99%A3%E3%82%92%E8%A6%8B%E6%A5%B5%E3%82%81%E3%81%9F%E3%81%84」

 

―何か「ぜひ見てもらいたい」という恣意的な意図を感じますが・・・

 ところでチームメートにもう一人日本人らしき選手がいましたが、

 コンビネーションはどうでしたか?

 「あぁ、E君ですね。今日はポジションが逆サイドだったので、

  連携プレーはありませんでした。今後はプレーの質を高めていって、

  日本人ホットラインを作っていきたいですね。」

 

―何か手応えを感じた、という部分はありますか?

 「うーん、そうですね・・・(しばし沈黙)。はっきりいって、

  今日は何も感じられなかったっていうか。ただ思ったことは、

  今の自分が出来ることは、とにかく走ることしかないってこと。

  陸上部時代は、800mで京都府内ランキング10位以内に

  入っていました。体格では敵わなくても、走力ではイギリス人にも

  負けていないはず。だから走力が自分の武器と考えて、

  次につなげていきたいですね。」

 

取材後、オフタイムはいつも何をしているのか、と聞いてみた。

「最近、スコーンにはまってるんです。

 イギリスでの生活、結構楽しんでますよ、俺。」

と屈託のない表情で彼は言った。

 

インタビューでは後ろ向きな発言が終始続いたが、

裏を返せば、強がることなく自分の気持ちを素直に語っていた、

とも受け取れる。そんな彼がイギリス生活を楽しんでいるというのは、

まぎれもない本音と言っていいだろう。

 

今回が初の取材となったが、あえて聞かなかったことがある。

「どうしてリバプールに来たのか」ということだ。

 

リバプールには、エヴァートン、トランメア、そして言わずと知れた

リバプールFCという、いずれも長い伝統を持つクラブが拠点を構えている。

もしかしたら彼は、そのどこかへ移籍したいと考えているのではないか・・・。

 

しかし素直すぎるほどに質問に答えてしまう彼にそれを聞いたら、

彼は好むと好まざるとにかかわらず、それに答えてしまうだろう。

 

現状にあまりにも大きな課題を抱えている中で

今後を語ってもらうのは無粋だと思い、

取材ノートを閉じることにした。

 

Fimberでは、今後も不定期で彼の英国での成長を追い続けたい。

未来を語れるにふさわしい男になる、その日まで。